ジェット・ストリーム
「 寂しい、僕は一人ぼっち ”Lone~ly, I'm Mr.lone~ly
僕には誰もいない I have nobody for my own
とても寂しい 一人ぼっちなんだ I'm so lone~ly, I'm Mr. lone~ly
誰か電話をかける人がいればな~」 wish I had someone to call on the phone"
と、甘く切ない歌声がラジオから流れる。その言葉は孤独者の胸深く染渡る。「一人ぼっちは自分だけじゃないのだと」。その歌声は間もなく包容力のあるオバマの様なバリトンの声に変わり、荘厳で静謐な宇宙の営みを謳ったナレイションが読み上げられる。
「遠い地平線が消えて、深々とした夜の闇に心休めるとき、
はるか雲海の上を音もなく流れ去る気流は、
絶え間ない宇宙の営みを告げています。
満天の星をいただく果てしない光の海を
豊かに流れゆく風に心開けば、
きらめく星座の物語も聞こえてくる
夜の静寂の、何と饒舌のことでしょか。
光と影の境に消えていったはるかな地平線も
瞼に浮かんでまいります。」
そのナレイションの美しい詩的表現に心酔いしれ、それが読み終わる頃には心は1600km/hrで自転しながら、10万㎞/hrの速度で暗黒の宇宙を旅する我々の故郷、地球上で宇宙の風を感じる。そして自分のちっぽけな悩みから暫し解放される。これは70’s年代に人気を博したラジオの深夜番組のイントロ部であるが、今もなお世界中至る所で天から降り注ぐこの種の調べを必要とするMr.lonelyは無数にいる。その何人かをここで紹介したいと思う。
アメリカ、日本、シリアのMr.Lonely
アメリカの16歳のジョージ君は、リーマンショックの影響で父親は失職し今家庭は衣食住にも事欠く有様。将来法律家を目指していた彼は将来の道筋が描けず独り心閉ざす毎日。日本の25歳の真澄さんは教師として一年間不合理で理不尽な学校組織、人間関係との戦いに疲れ辞職し、今大学に戻り教育関連知識を深め再度教師に挑戦をと勉学に勤しむ日々。38歳のシリアのシャナッツ
夫人は銃声の飛び交う内戦シリアで命を賭して自由な社会を求めて反政府活動に明け暮れする日々。みんなひっ迫度の差こそあれ自分の信じる道を求め、ある時は折れそうな心を奮い立たせ生きているMr.lonely達だ。
最大の敵は自己の内に
世界中のMr.lonely達よ!今日は彼等と共にお互いの内なる苦悩を分かち合おう。人の心は瞬時目まぐるしく変化する。「絶対に!」と固く決意した心も時の移ろいとともに薄らいでいく。「自己の道を歩む最大の時は自己の内にある。今日勇気と希望を持った者でも孤独が我々の決意を疲弊せしめ、(自分は寂しい)と言わしめるだろう。」とはニーチェの言葉だ。向こうにはあんなに穏やかで明るい陽光に包まれた楽園が…」と夢の中で呟くかもしれない。
雲水(禅の修行僧)の生き方が我々に
そんな時、心を支えてくれるのは偽善的な優しい言葉ではない。自分たちより何十倍もの過酷の道を歩んだ人々の生きた言葉だ。僕が奈落の底に沈んでいく様な内なる危機感を感じたとき勇気を与えてくれる一枚の写真がある。右に示した雲水たちの生き方を象徴した写真と言葉だ。
夏、早朝初、日の光が土塀を超えて地面に落ちる。禅寺の境内に立つ。静寂。「時」が私の全身をすっぽりと包み、やがて体に浸透してくる。「彼等」は何を求めて、寺院を捨て、地位を捨て厳しい修業に身を投じたのであろうか? 「彼等」は今、何処に行っててしまったのだろうか?
彼らの全てを捨て切って己の道を求める孤高なる生きる姿勢はいつも僕の甘い心を奮い立たせ、
新たな挑戦のをする勇気を与えてくれる。
サムライ Mr.lonely
運命の悪戯故か?「これ以外に自分の進む道はない。」と自己の運命を生きる覚悟した人にとって
命がけで自己の道を歩んだ人の言葉は珠玉だ。最後にこれ以上過酷な苦難の道を歩んだ人は今にも過去にもいなかったと言える程、孤高なる熾烈の人生を歩んだ我々の大先輩のMr.lonelyを紹介しよう。生涯に渡ってハエを箸でいとも簡単に摘まむほど精神修養を積み、剣の道を究めた剣豪宮本武蔵だ。武蔵が自己の弱さ、甘い誘惑の負けそうになった時自分の心を支えた生活信条がある。死の直前洞窟で書き上げた「独行道」という人生哲学だ。ここにみんなで吟味しよう。
1.生涯欲にとらわれず
2.自分の行った行為は後悔しない
3.別れは悲しまず
4.恋心は持たず
5.美食にとらわれず
6.いつ死んでも後悔はせず
7.仏神は敬うがそれに依存せず
自分の悩みなどまだまだ
これに目を通した後、普通の人は「何のために一般の人々の喜びを放棄して、そこまでしてそんな過酷な道を歩んだのか?」という疑問が当然起こるであろう。それに対するぼくの解釈は「ほかの人生を選択しても自分は決して幸福になれない。」と絶望的に感じるほど彼が求めたものは自己の核心的な問題であった。」ということに尽きると思う。人にはそれぞれ自分に与えられた宿命というものがある。その宿命を妥協することなく真摯に追及することこそ真の本当の幸福を見出すことができるのだと思う。武蔵の場合剣豪としての天才を生きること。その生死の狭間のギリギリのところで喜怒哀楽に基ずく人生を生きる我々普通の人々が達しえない恍惚感を経験していたのだと思う。自己の道を求めるということは、ここまで厳しいということであろう。我々一般の人間は彼のような極端な人生を歩むことは不可能である。が、少なくともそこから己の道を歩むということの厳しさを知り、そうした人々の人生に比べれば「自分の苦悩などまだまだ・・・」という勇気をもらうことは可能であろう。
防人のMr.lonely
ジョージ君、真澄さん、シャナッツ夫人、そして世界中のMr.lonely達よ!暫し耳を澄まそう。そして心に染渡る防人の孤独を謳った”Mr.lonely"二番を聴こう。
僕は兵隊なんだ I'm a solider
孤独な兵隊なんだ a lonely solider
望んだわけでもないのに家から away from through no wish of my own
遠く離れ
だから寂しいんだ。一人ぽっちなんだ That' s why I'm lonely . I'm lonely
家に帰れたらどんなにいいだろうな~ I wish that I could go back home